オヤジたちの修学旅行 その9 幼なじみ

 

    幼なじみ

 

Kっちゃんは幼なじみ。14歳の頃、一緒にサーフィンを始めた。

始めた当初寒くて上手くならなくてサーフィンをやめたいと思っていた僕の家まで呼びに来てくれたKっちゃんがいたこらこそ、今サーフィンの仕事ができている。

サーフィンを始めて34年、Kっちゃんとの初めてのサーフトリップだ。一緒に旅行するのは修学旅行以来だ。

彼はサーフィンも好きだが、魚を釣ったり、突いたり、潜って貝を獲ったりするのが好きなので最高の旅になるはずだ。

小さい頃からおもちゃやゲームそっちのけで、海の中や山の中で遊ぶタイプ。なので海の生物や食べられるもの、山の中の中にいる生物植物、食べられるものもの、その料理の仕方まで異常に詳しい。自然を見て楽しむのではなく、自然の中に生きるタイプだ。(写真 現地の人ではありません 笑)

今回も海に潜り日本の10倍はあろうかというデカイ貝をたくさん捕まえ、現地の人が毒があるからやめろという中、自分で貝を蒸して当たり前のように食べた。僕は遠慮したが、何を根拠に言っているのかわからないが「絶対に大丈夫」と彼なりの自信と確信があったようだ。

 

小さい頃の遊び方も独特。ドブの中でありえない数のカエルの卵を捕獲したり、大量のイモリを捕まえ人に投げて喜んだり、その変わらぬやんちゃぶりは今回のトリップでも見せてくれた。

無人島で人が死ぬほどの猛毒を持つ巨大なオニヒトデを捕まえて本気でみんなに投げようとして、ビビるみんなを見て喜んだ。笑

ここまでの話でもどういう感じの人かが何となく知ってもらったと思うが、まあワイルドで、物怖じせず、迷いがない。

サーフィンでも同じで、波が来たら迷わず行く!なのでいつも自分のスキル以上の海に入り乗ってしまう。ただいつもギリギリの所で難を逃れる。

なのでサーフィンを始めて34年経った今もそのギリギリのやばいラインを知らない(笑)

 

 

そんなKっちゃんがとうとうやってしまった。

 

今回最大にうねりが上がった日。波は激掘れ!さらにサイズアップ!僕がギリギリ、乗れそうなイージーな波だけを選びトライしていた時、かっちゃんが入って来た。

 

やばい..    何もなければ良いが..        何か嫌な予感。

 

ワイプアウトしインサイドのサンゴと戦っていると、沖でかっちゃんがチャージするのが見えた!!

おお!!!!テイクオフはメイクしそのままチューブに入りそうだ、と持った瞬間激掘れの波に飲まれてしまった。

(イメージ写真 笑)

サンゴの上から脱出しKっちゃんに近づくと

「やばい!!腕が上がらん.. 」といつもとは違う表情にただ事ではないことがわかる。

マジ!?

かっちゃんを船まで押しながら戻り引き上げると脱臼し肩の形が変形している。音がしたらしく筋も切れているかもしれない。

ここはWi-Fiも電話も繋がらない。医者といってもお祈りをされそうな秘境。

たまたま船の近くで泳いでいたフランス人の医療関係者の女性が船に上がり肩を入れてくれようとしたがうまく入らない。

最悪のシュチュエーションが頭によぎる。半分はマレーシアまで行くことになるかもしれないと覚悟した。

結局、脱臼癖のあるというN兄が経験を生かし、バッチリ肩を入れてくれた!!

やった〜!!!!みんな大喜び!!

 

ただそれから回復を期待したがそこから5日間帰るまでサーフィンできなかった。

みんながサーフィンに行っても船上からその姿を見ることしかできない。辛い。

逆の立場になって思うと、僕なら確実に落ち込んでしまい、それが表情に出てみんなに気を使わせてしまっていたかもしれない。

そんな状況で、笑いを絶やさず、周りに気を遣わすことなく自然にそこにいた。

みんなと笑いながらボートに乗り込み、みんなのライディングの写真を撮りビデオを撮った。

人生賭けて来たこのトリップで、しかも最高の波を目の前にしてサーフィンできない。明日できるかもしれないわずかな期待を持ちながらできない日々。そんな中、気持ちをコントロールし、そん中でも楽しもうと心がけた。

時間が経って思い出せば思い出すほどとじわじわと同級生Kっちゃんの人間の太さ、懐の深さを感じる。

同級生なのでこんなことを言うのは気恥ずかしいが、めちゃくちゃかっこ悪いはずなのに、誰のすごいボトムターンよりも、誰の深いチューブライドよりも「かっこいい」Kっちゃんを見た。

今回痛いお灸を据えられ、ギリギリのラインを知った(笑)そのKっちゃんとみんなでまたいつかトリップ行きたい。

 

多分同じあの波が来てもまた迷わず行くと思うけど(笑)